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高森明勅
2016.11.21 01:00

日本教師塾、テーマは「日本神話」

11月19日、今期3回目の日本教師塾。

今回のテーマは「日本神話」。

第1部は2人の小学校の先生方が発表された。

トップバッターはまだ25歳の可愛らしい女性、H先生だ。

現在、2年生の担任をされている。

日本神話を7つのパートに分ける高森説により、
スケッチブック7冊の「神話紙芝居」を作成中。

これまで、第3話まで完成している。

すべてクレヨンで手描き。

その絵はいかにもほのぼのとしている。

しかも随所に楽しげな質問が織り交ぜられている。

この日は、既に完成している3冊の内容が紹介された。

これは子供たちが喜びそうだ。

中には学問的に些か首を傾げる部分もあった。

しかし、そこを「訂正」してしまうと面白さが削がれそうで、
悩ましい。

小学生(特に低学年)なら暫く“楽しさ優先”で良いのかも知れない。

教室の椅子や机を片付け、教壇もどけて、
先生の前に子供たちが
ギューっと集まって床に座り、
紙芝居を聴く。

神々の様々な活躍が、先生の温かさが伝わって来るような
手描きの絵で表現され、
先生自身がクラスの子供たちを想像しながら
分かりやすくアレンジ
した神話の物語が、先生の優しい声で語られる。

時々、興味をより掻き立てるような質問も交ざる。

子供たちには至福の時間ではないか。

実際に、紙芝居で一話が終わると、とても残念そうにするようだ。

早く次の話を聴かせて欲しいと。

教育効果もかなり高いと予想出来る。

私も小学生の頃、そんな授業を受けてみたかった。

次は塾運営の中心人物、K先生。

僅か10分の発表(ちなみにH先生は30分)。

だが、参加者は皆さん、深く感銘を受けた。

今は4年生の担任。

最初、さらりと神話の物語を教える。

その時に、予め「ある事」を子供たちに伝えている。

だから子供たちは懸命に聴く。

そのある事とは、先生の説明が終わった後に、
インタビュアーと回答者に振り分けて、子供たち同士で、
神話について質問したり、答えたりするというのだ。

自分で質問内容を考えて質問するとなると、
先生の話をいい加減に
聞き流す訳にはいかない。

また、自分がインタビューを受けるなら、やはりきちんと先生の
説明を理解しておかなくてはならない。

だから子供たちは必死。

で、説明終了後、インタビュアー役の子供はてんでに質問して回り、
回答者役の子供はいろんな相手から次々に質問を受ける。

クラス中が盛り上がって大騒ぎになるらしい。

その中で、こんなやり取りがあったそうだ。

少し学力が劣っていると見られていた、やや暗い感じだった男の子に、
利口な女の子がこんな質問をした。

「神話では神様が日本の国土を生んだと言いますが、
それは本当だと信じられますか?」

その質問に彼はキッパリこう答えた。

「信じられます」
どうして信じられますか?」
「だって、
人間が何もしていないのに、地面から草が生えます。
だから信じられます」面白いやり取りだ。

このように答えていた時、
彼はいかにも嬉しそうに
満面の笑みを浮かべていたそうだ。

その回答に対して他の子供が、こんなチャチャを入れた。

でも日本以外の国でも草は生えるじゃない?」と。

それにも即座にこう返した。

それはその国にも別の神様がいるからだよ」と。

この授業がきっかけで、この男の子は少し変わって来たとか。

H先生のクラスの子供たちも同様で、
日本の国土は
神様が生んだという物語に皆、
とても興味を持つそうだ。

それにしても、このインタビュアーと回答者の役を交互にやらせ、
どんどん次の相手に移って行くという学習方法は、極めて効果的
だろう。

授業への集中力を高め、理解力を促し、応用力を身に付けさせ、
知識が定着する度合いも格段に
違ってくる。

更に副産物として、クラスのいろんな子同士がコミュニケーションを
取る経験になり、
全体のまとまりも出来る。

よほど注意深く考え抜かれ、周到に練り上げられたメソッドと
感心した。

ところが、ご本人は「子供たちが喜びそうだったから」とか。

天性の教育者なのか。

その後に私が60分の講義を2コマ。

以下、感想文のごく一部を紹介する。

古事記神話は全編を通じて成長の物語だったらということが
今回の
大きな発見でした」(神奈川県E先生)

「遡(さかのぼ)り神話論、とても新鮮でした」(千葉県T先生)

今上天皇からたどっていく日本神話、とても勉強になりました」
埼玉県M先生)

「『自己肯定感を育成する教材』としての日本神話との認識を改めて
深められました」(
山梨県Y氏)

神様たちの未完成な部分が困難を乗り越え成長していくという
説明
に納得できました」(東京都U先生)

断片的に知っていることが逆からの説明で、こうつながって
いるんだということがよく分かりました」(
千葉県K先生)

「『(天孫ニニギの命が)なぜ大和に降りなくて日向に降りたのか?』

大和に降りるだけの資格がなかった』このお話が今日一番の驚き
した」(東京都Y先生)

若い先生方がせっかくの休みを返上して、このような自主的な
研修を続けておられる事に改めて敬意を表した
い。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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